手間隙掛けたナシ1
その代わりとして、セイヨウナシには、飛び切り上等の風味を授けてくださったに違いない。
セイヨウナシは、モモやカキなどのように、木に生ったままで熟すのとは違う。
果実が十分に大きくなって、中身も充実した状態になると、枝からいったん離れる。
それから何日かの日数をかけて、人間がうまいうまいといって食べてくれるよう、果肉も果実の外観も作り直す。
ここで初めて軟らかく熟し、人間誘惑剤、つまり香気で体を包む。
品種によっては、肌の色まで黄色く変えて、媚びるしぐささえ見せる。
三十年前に、ぼくはそれにころりとひっかかったというわけだ。
それでは、野菜 種とともに収穫する時期はどう判断するのかという疑問もあるだろうから、もう少し説明をつけ加えよう。
第一には、果実の方から「もう離れたくなってきたわ」と自分で支度を始めてくる。
つまり、枝とのつけ根の部分に離層を形成する。